提携による国際分業体制の構築 : 駐在員及び本社のあり方を中心として
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概要
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国際分業の必要性が高まる中、日本企業の多くは海外企業との協力的な関係の構築に苦戦している。本稿では、エネルギー分野における日本企業の中国市場参入及び現地企業との分業に焦点をあて、協力的な企業間関係を構築する際に起こりうる問題を明らかにすることを目的とする。中国におけるエネルギー分野は規制の厳しい業界であり、現地企業との提携や技術移転が市場参入の前提条件として課されている。提携の成否は市場参入の深化、国際分業体制の構築に大きく影響を及ぼす。国際提携において、文化の差異による摩擦は避けられない問題と認識されているが、本稿では、これが本質の問題ではない事を指摘する。駐在員による高圧的な指導や現地作業員との接触の仕方など、細かい揉め事や衝突は時間とともに大きな不満や対立に発展し、こうした生産現場レベルで生じる問題は、提携における協力関係の形成に負の影響を与える。国際分業体制を構築するためには、生産現場段階で協力的な関係を形成する方法を模索することが必要となる。また、提携発展を阻害した駐在員の行動は、異文化理解への不足ではなく本社支援体制の不備に原因があり、支援のあり方が駐在員の行動を左右すること明らかにする。海外企業との協力的な国際分業関係を構築するためには、まず、日本本社はこれまでの認識や経営方針を根本的に変えることが必要となるだろう。駐在員は本社との連絡調整役ではなく、彼らが提携プロジェクトを運営できるような人材育成システムを整備することが急務となるだろう。
- 2013-09-30