「加害者治療」の観点から : 暴力加害者への臨床論のために(<特集>「司法臨床」の可能性:司法と心理臨床の協働をめぐって)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
筆者は、ドメスティック・バイオレンス(DV)、虐待、性犯罪の男性加害者を対象にした脱暴力へのリハビリテーション(更生)にかかわっている。広い意味での治療的司法の一環として位置づけている実践である。暴力や虐待をとおして満たされている欲求があり、それが習慣化し、長期間、反復されているので、行動的心理的な変容を促すことを主眼にした加害者臨床が必須となる。とくに、対人暴力を伴うので、規範と動機の形成が重要となる。彼らの特性からすると司法的な強制力は不可欠であるが、しかし、効果的な問題行動の修正のためには心理的なアプローチが接合されるべきである。筆者は人格や行為、生育過程や家族関係にかかわるミクロな視点と、男性性にかかわる暴力文化やその社会化というマクロな視点の統合が重要であると考え、両者のリンクが法と心理の連携をとおした修復的-治療的司法の枠組みのなかで可能になると考えている。本稿はそうした立論に包含されている論点を整序したものである。
著者
関連論文
- 親密な関係性における虐待・暴力と加害者臨床論 : 虐待的パーソナリティ論の検討をとおして
- 井上眞理子著『リスク・ファミリー : 家事調停の現場から見た現代家族』
- 自立と孤立をめぐる社会臨床学的考察--虐待する父親たちのグループワークをとおして (特集 自立と孤立--当事者の語り、支援の現場)
- 須長史生著『ハゲを生きる:外見と男らしさの社会学』
- ドメスティック・バイオレンス加害者治療の試み--「男の非暴力グループワーク」の経験から (特集 性暴力とDV--加害者治療の可能性を探る)
- 男親への働きかけをとおした家族再統合支援 : 大阪での男性向け脱暴力支援の取り組みから (特集 保護者支援、私の工夫)
- 男らしさの病と社会臨床の課題(特別講演,第49回日本心身医学会近畿地方会演題抄録)
- 「加害者治療」の観点から : 暴力加害者への臨床論のために(「司法臨床」の可能性:司法と心理臨床の協働をめぐって)