韓国における博物館IPMの現状と課題
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概要
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韓国の私立博物館におけるIPMの現状は,通常から害虫やカビに対する点検に力を入れ,特に被害があるような場所には市販の防虫剤と調湿剤を隅々に設置するなどの対策を行っている.加えて梅雨の時には,毎日除湿器を稼働させ,晴れの日に虫干しなどをしている.薬剤を用いた殺虫を伴うくん蒸は行っていない.国公立博物館や大きな企業の博物館を除いて,ほとんどの私立博物館では劣悪な環境であって,展示の仕事だけで精一杯で,保存環境を整える余裕があまりない状況である.現状として言えることは,国公立博物館からIPMの重要性が認識されてきて,私立博物館にも徐々にその意識が強まっている事である.私立博物館での点検の際に筆者が採集した虫類は,ヒメカツオブシムシ,ヒメマルカツオブシムシ,タバコシバンムシ,ゴキブリ,アリ,カ,ハエ,ノシメマダラメイガ,ゲジ,マダラカマドウマ,クモ,ミツバチであった,その中で,ヒメカツオブシムシ,ヒメマルカツオブシムシ,タバコシバンムシは生きたもので,残りは死骸であった.そこで筆者は,春から夏にかけての5ヶ月間に,博物館内で生存した状態で採集したヒメカツオブシムシ(black carpet beetle,Attagenus unicolor japonicus)の成虫の25匹を,採集したハエやクモなどの死骸を餌として与えて飼育した結果,幼虫42匹が生まれ,また採集した幼虫の4匹のうち2匹が羽化した.この筆者による観察によって,博物館内に,もし1匹の害虫が生息していたとしても,どれほど増えて,被害が広がり怖いものになるかが推定される.以下に,筆者が勤務する博物館を含めて韓国でのIPMに関する実態を述べる.
- 2013-12-20