親族間で用いられる他称詞の運用 : 話題の人物を捉える視点と表現形式
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概要
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人称詞の先行研究は,自称詞と対称詞に集中することが多かった.人称詞に関わる人物が,自称詞や対称詞では主に話し手と聞き手の二者であるが,他称詞の場合,話題の人物を含め三者となる.話し手と聞き手,話し手と話題の人物,聞き手と話題の人物という複雑な人間関係を把握する必要があるため,他称詞の研究に消極的だったのではないかと推察できる.本稿ではこれまで十分に解明されていない他称詞を研究対象とする.日本語の人称詞の形式は,上下関係,職場関係,家族関係という三つの観点から分析できること(小泉,1990)から,本稿ではその一つである親族関係に焦点を絞った.実在する親族を対象に参与観察を行い,親族間で他の親族に言及する他称詞のデータを収集した.親族は,血縁関係にある者と婚姻によって親族となった非血縁者から構成され,親族関係と年齢に基づき,曽祖父母世代,祖父母世代,親世代,子世代の四つに分類できる.データ分析の結果,次の四点が明らかになった.(1)話し手が話題の人物を捉えるには,話し手の視点,聞き手の視点,第三者の視点という三通りの視点の取り方がある.(2)他称詞の表現形式として主に親族語と名前が使われ,ごく稀に姓が使われることがある.(3)視点と表現形式の選択には,話し手・聞き手・話題の人物の三者間の世代差と血縁関係が関わっている.(4)聞き手が年少者の場合,話し手は聞き手の年齢に配慮し,話題の人物を捉える視点を決定する.
- 2013-09-30
著者
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