1950年代から1970年代の更生保護制度における「官民協働」論の変容と継続 : 保護司への役割期待の本質
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概要
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戦後日本の更生保護制度は,保護観察官と保護司による「官民協働」を基調に展開されてきた.この「官民協働」の下では,公務員であり「専門家」である保護観察官と,「地域性」「民間性」を有する保護司が,それぞれの長所を活かして対象者とかかわる点にその意義が求められた.その意味で,「官民協働」体制は保護司に対し,保護観察官とは質的に異なる要素を持つことを期待していたかに見える.他方で,保護観察官が慢性的に不足し,対象者との面接や環境調整といった保護観察の重要な処遇の大半を保護司に委ねる「官民協働」体制は保護司に対し,保護観察官の量的不足を補う役割を期待する側面を有していたのではないか.こうした問題意識の下,本稿は1950年代から1970年代の更生保護関係者や研究者の議論を再検証する.これを通して,「官民協働」体制が保護司に対し,「民間性」「地域性」を持って,保護観察官の人数的不足を補う「篤志家」の役割を期待するものであり,そうした役割期待が保護司の担い手を地域社会における一定の層に偏らせたことを指摘する.これを通し,保護司の担い手確保が喫緊の課題とされる今日の更生保護制度への示唆を引き出したい.
- 2013-10-15