多文化関係研究における構築主義的アプローチの有効性 : ライフストーリー研究を中心に
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概要
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本稿は、対話的構築主義(桜井,2002)という立場に依拠したライフストーリー研究が多文化関係の理解と説明を志向する研究に対してどのような点で有効であるのかについて論じるものである。第1に、対話的構築主義は、関係的存在としての個人に焦点を当てるため、多文化的状況において生活する人びとの個別性を記述すると同時に、個人の認識形成に影響を与える多文化関係をも捉えることを可能にする。第2に、対話的構築主義では、インタビューにおける語りを「事実の口述」として捉えず、インタビューという相互作用場面で「構築される言語的表象」であると捉えるため、多文化関係を生きる人々が言語を介して行う現実構築のあり方に近接することを可能にする。第3に、対話的構築主義は、インタビューにおける調査者の立場を「中立的立場」から「共同制作者」として捉え直すため、研究者が「中立性」を装うことを許さず、調査対象者と研究者のインタラクションを分析の対象とした。この分析枠組みにおける転換は、語り手が関わる多文化関係をより慎重に読み取ることを可能にする。以上のような点で、対話的構築主義は、多文化的状況における関係の理解と説明を目指す研究に対して有効であるといえよう。
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