被害と復興の格差問題と建築社会研究(<特集1>建築社会研究は東日本大震災とどのように向き合うのか)
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概要
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ドイツの社会学者・U.Beckが提唱したリスク社会論をもとに、震災の被害とそこからの復旧・復興における格差について考察した。Beckは、現代社会において公害や自然災害といった人間へのリスクの分配が、他の課題にも増して重要な課題となっていることを指摘した。リスクは、ある程度平等に人々にもたらされるが、社会階層に応じて不平等にもたらされる面も有している。リスク分配の偏りのメカニズムを解明し、それを是正していくことは、現代社会学の課題の一つである。阪神・淡路大震災や東日本大震災では、社会階層や家族構成によって、被害の格差が生じていた。格差が生じた背景には、どのような建物に住んでいたかということが大きくかかわっていた。また、被害からの復旧・復興の局面でも、震災以前の社会階層や家族構成、さらに貯蓄やネットワークの有無によって、状況に格差が生じていた。リスク分配の偏りは、災害に際して私たちの目に見える形で浮かび上がってくる。しかしながら、それは災害のない日常の中に潜在する課題である。建築社会研究は、建築の社会的特質と社会的影響を明らかにすることを目的としている。建物や住環境の面からみた、社会におけるリスク分配の偏りのメカニズムを解明し、偏りの是正や全体としてのリスクの軽減に貢献していくことは、建築社会研究の課題である。
- 人間・環境学会の論文
- 2011-12-30
著者
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