居住空間の快適感を高めるための対比効果の応用について
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概要
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ある特定の空間の快評価が,隣接するより快適性の低い空間との対比により上昇するという仮説を検討した.実験1では窓を通して屋外が見える室内写真が提示された.無作為に3条件に分けられた被験者は各々,屋外の地面だけが,コンクリート,砂利,芝生というように異なる室内風景に対して抱くいくつかの感情を評定尺度法により評定した.その結果,いくつかの室内では屋外の快適性が低いコンクリートの条件で有意に快評価が高く,快適性の高い芝の条件で低いという,明瞭な対比効果が見られた.実験2では,被験者は実際にアルコーブの中に入りその印象を評定した.無作為に3条件に分けられた被験者は,隣接する空間だけが,カーペットの敷かれていない条件,敷かれた条件,カーペットとソファがしつらえられた条件というように異なるアルコーブを各々評定した.その結果,快適性の低いカーペットのない空間が隣接する条件でアルコーブの快評価が最も高かったが,有意ではなかった.これらの結果は対比の概念に基づいて解釈され,更にこうして生じた快評価は,その特性上減衰することなく持続し,また個人差の少ない一般的な反応である可能性が考察された.
- 人間・環境学会の論文
- 2000-12-24