3-3 信頼性工学的側面から見た公理的工学規範について(セッション3「組織,管理,規格,プロジェクト面と安全性,リスク(2)」)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
近年の新聞報道などの社会的規模の事故を顧みるとき、第一福島原子力発電所の地震津波に関連する一連の事故とその対応、先般の笹子トンネルの天井板崩落事故とその後の全国のトンネルの総点検、原子炉廃炉コストの引当金の欠落ないしは不足、放射能廃棄物の処理、非効率な除染処理活動、エレベータでの人身事故、ガス器具による人身事故等多くの社会資本に対する保全管理と保全活動の不完全性及びライフサイクル管理体制の不備が観察される.加えて、全国トンネル、橋梁等の総点検、原予力発電系統の安全性宣言、工学的見地の少ない対象住民の合意という安全、原子炉と発電施設の耐用寿命の40年延長に関する議論、福島事故の終息を待つ間もなく工業後進国への国を挙げての原子力発電系の売り込み等の施策活動が報道されている.システムライフサイクル管理活動の視点から見るとき、設計思想の継続的維持管理、中長期保全計画、保全手法と保全支援体制、及び、総合管理責任体制の欠落が観察される.また、社会資本のライフサイクル管理活動としての対処や改善活動、ライフサイクルコスト見積評価に基づく検討もなく、近視眼的経費削減などの経済効果を求め、適正管理が十分に見えず、加えて、工学的視点からの管理能力の未熟さを発露しているとみる.技術者としてこれらの工学的未熟さと短観的な管理体制が社会的に是認されている現状を危惧し、また産業界、経済界、学界等日本国全体が何か尋常でないおかしな状態にあると認識するのは我々著者のみではなかろう.本稿は、現状の問題点を明確にし、社会的工学的水準の低下状態の現状を認識するとともに批判し、あるべき適正で実現可能な道を検討し、次の世代への適正な工学的伝承を配慮しつつ、これからの在り方、道、工学的倫理規範を検討し、新たな提案をおこなう.
- 日本信頼性学会の論文
- 2013-11-05