日本語の空間移動表現 : 通言語的実験から捉える
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概要
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通言語的な実験を用いた,移動表現の研究を紹介し,それを通して明らかになった日本語移動表現の性質の一部を報告する。研究内容の全体について解説した後,明らかになった点の中から,様態,経路,ダイクシスの表現頻度について考察する。日本語は,様態と経路の表現頻度が諸言語の中で平均的である一方,ダイクシスの表現頻度が高い。これは,様態,経路,ダイクシスに言及するかどうかに関する条件の違いと多重指定の可能性を反映している。たとえば,日本語は様態について,〈歩く〉に言及しない傾向がある。ダイクシスについては,どのようなケースでも一貫してダイクシス表現(動詞)が使われ,話者へ向かっての移動では多重指定が起こることから,表現頻度が高い。