高齢者施設における平常時の結核対策の実態と保健所の役割に関する研究
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概要
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目的:高齢者施設における結核の早期発見に資するため,東京都下1保健所の高齢者施設における入所者の結核の発生状況と平常時の結核対策の実態を調査し,保健所の役割を検討した.方法:平成20年度に管内高齢者施設で発生した結核患者4名の登録票等の分析を行った.また,管内高齢者施設40施設を対象に,平常時の結核対策の実施状況の調査を自記式調査票により行い,全施設より回答を得た.結果:4名の結核患者は3施設から発生し,そのうち2施設は有料老人ホームで,結核定期健診,健康観察の実施は徹底されていなかった.施設職員に感染が拡大したと考えられる事例もあった.40施設の結核定期健診は,9割の施設で実施されていたが,比較読影が未実施,未受診者がいる施設があった.健康観察は毎日の発熱,呼吸器症状の確認が実施されていなかった.施設種類別では,有料老人ホームと軽費老人ホームに実施されていない傾向があった.結論:管内施設の平常時の結核対策は,有料老人ホーム,軽費老人ホームで実施されていなかった.実際に,早期発見が困難な体制の有料老人ホームにおいて結核患者が発生し,職員への感染拡大源になったと考えられた.保健所は,有料老人ホーム,軽費老人ホームを中心に,本調査結果に基づく情報提供を行い,結核定期健診の実施の徹底,健康観察の質の向上のための体制づくりを行うことが必要である.
- 国立保健医療科学院の論文