現代スーダンにおけるタサウウフとサラフ : ルカイニー教団の教義と教導を事例として
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概要
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本論文の目的は、スーダンのルカイニー教団を事例とした、タサウウフとサラフの思想的連関についての考察である。ルカイニー教団は、初代シャイフのムハンマド・アフマド・ルカイニーがアッラーと預言者ムハンマドから直接タリーカ開設の許可を得たことにその起源を持つ。そのため、同教団はアッラーによって選ばれし教団であると主張するだけでなく、血統的・道統的接点の不在をはじめ、他のタリーカとの明確な差異を強調する。このルカイニー教団の特色として、自らを「回帰の心と刷新の精神を結合した中庸の方法を取る、スーフィー・サラフィー教団(タリーカ・スーフィーヤ・サラフィーヤ)」と説く点が挙げられる。同教団の思想に依拠すれば、タサウウフとサラフのどちらか一方の極に偏るべきではない。タサウウフとサラフ双方の教導を通じ、サラフへの回帰とイスラームの刷新を目指すことが重要となる。本論文は、ルカイニー教団の教義はいかなるものか、同教団においてタサウウフとサラフはそれぞれいかなる意味を有するのか、また、同教団がなぜタリーカ・スーフィーヤ・サラフィーヤと称しているのかという3点に着目する。ルカイニー教団において、タサウウフとは完全なムスリムたるスーフィーを養成する、サラフの方法に基づいた教導である。預言者ムハンマドを含め、ムスリムの模範たるサラフに依拠した教導としてタサウウフは定義されているのである。つまり、タサウウフとサラフはイスラーム教育の根拠として密接に関わり合う。ルカイニー教団は、スーフィーとサラフィー両極の間に位置する中道の立場を主張する。さらに、同教団はタサウウフとサラフの両要素を方法論的に混淆させた結果、イスラームの真正な道を歩んでいると説く。ルカイニー教団におけるタサウウフとサラフの関係は相反する別個の概念として二元論的に捉えられるのではなく、教育の根拠として相補的かつ不可分な関係にあったのである。
- 2013-07-15