近江商人による地域経営圏の構築(統一論題「企業による地域経営圏の構築」)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
日本経済に多大な功績・影響を与えた産業や企業を輩出してきた地域の1つに、滋賀県の近江地域がある。そこから発祥し、江戸時代初期以降、とくに北関東・東北・北海道で活躍した卸行商人を総称して「近江商人」と呼ぶ。日本を代表する商社・百貨店・紡績など、その多くが近江商人系企業である。近江商人の商法は、封建的な幕藩体制下において、他の藩領との私的交易を基盤としたものであり、きわめて特異なものであった。近江商人の商法は、物資の調達から供給までの全過程に関わっていた。その機能は、現代の総合商社の三国間貿易にも似たものであり、近江商人の商法の強みは、抜群の市場開拓力に根ざした物流ネットワーク力にあった。幕藩体制下にあって、他の藩領での行商からはじまり、やがて出店を開いて経営をしていく上で、世間つまりその土地の人々との摩擦を避け、信頼を得るための処世訓として、「売り手よし、買い手よし、世間よし」といわれる「三方よし」の家法・家訓がある。つまり、他国での行商の心得としてそれらが強調するのは、他国の人々が商品に満足することを何よりも優先させることであり、高い利益を得ようといった自分本位な欲望を抑えることによって地域経営圏の構築をめざした点にある。本稿では、近江商人の経営実態(企業管理、ビジネス活動、経営に関する技術・技法・技能など)について考察することで、かれらの経営哲学(CSR経営)由来する地域経営圏の構築の実態について明らかにすることを目的としている。
- 2013-06-07