教室における人格発達の最近接領域に関する一考察 : ヴィゴツキーの心理システム論の観点から
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概要
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本研究の目的は,教室における人格発達に関して,情動を外部から統制することの問題を克服し得る観点を得ようとすることである。本研究では,ヴィゴツキーの発達の最近接領域(the Zone of Proximal Development: ZPD)論を人格発達論の観点から捉え,当事者の視点からはZPDが<分からないが分かる>,あるいは<何となく分かる>という「発達のパラドクス」を含んでいることを確認した。また,後期ヴィゴツキー理論における心理システム論の観点から,認知過程と情動過程の二つの異なるシステムの力動的関係に注目し,ZPDを子ども全体(whole child)として捉えることを試みた。その結果,1)認知的な意味と情動的体験の二つの<分かる>が複数の心理諸機能の関連する心理システムとして機能することで「発達のパラドクス」が解かれるということ,2)人格発達の最近接領域は,理解が「意味」を介して<分かる>ことを超えて,「情動的体験」から<何とな<分かる>ことに始まること,3)この情動的体験の第一歩を可能にするのは,自他の情動的・身体的関係において,当事者が自らの外在性を獲得するからであることが明らかとなった。
- 2013-03-31