「教育的タクト」とシステム理論 : 教育のパラドックスのコミュニケーション的変換と継続
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本研究の考察の投射点は,理論と実践をどのように結びつけるか,これらの媒概念としての「教育的タクト」をどう形成するか,という教授学の中心的な問いではなく,両方の結合が困難な場合に,そこに浮かび上がる「教育的タクト」の姿はどのように観察され得るのか,との問いを究明することにある。結論を述べれば,それは理論と実践の継ぎ手から,教育のパラドックスをパラドキシカルなコミュニケーションとしてパラドキシカルなまま継続・循環させる「教育的タクト」への解釈転換の企てを意味している。本研究における方法上の考察枠組みはニクラス・ルーマン(Luhmann,N.)のシステム理論にある。それゆえ,「教育的タクト」という教授学の伝統的な概念の再記述が企図されるが,その検討手続きは以下のように整理され得る。検討課題の一つは,伝統的な教授学,直接的にはヘルバルト(Herbart,J. F.)とノール(Nohl,H.)による「教育的タクト」の中身の検討である。そこには一般性と特殊性の「擬似的な統一」というカムフラージュの機能があることを指摘できる。課題の二つ目は,教育の不可能性から出発するシステム理論の基礎概念の考察である。教育の「意味世界」の肥大化と「非平凡な機械」の平凡化との関係に,教育のパラドックスの根幹があることが説明される。三つ目の検討課題は,このパラドックスに「教育的タクト」がどう関係するのかの究明にある。
- 2012-03-31
著者
関連論文
- ビーレフェルト実験学校の設立背景と教育理念
- 「教育的教授」論と教科指導(学校教授) : 教えの体系化と潜在化した動機の間(第1部 「知識基盤社会」における教科指導を問う)
- 「教育的タクト」とシステム理論 : 教育のパラドックスのコミュニケーション的変換と継続