授業の贈与交換関係 : リテラシー教育のコミュニケーション構造に関する基礎的考察
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概要
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本稿の目的は,贈与交換という視点からリテラシー教育の土台となる授業のコミュニケーション構造を検討しようとするものである。まず,本稿では,読解力や言語活動の取り組みの問題点を指摘し,「市場」「資本」という経済概念で言語的交換をとらえ直すことで,言語能力や読むという行為を文脈的で社会構造的な関係性の中で理解する見方を提示した。そうすることで,経済市場と結びつきながら不平等に分配されている言語資本と場の構造をどのように変えることができるかという課題が浮び上がることを指摘した。次に,市場化されたコミュニケーション構造の編み直しの論理を明らかにするために,贈与交換論を検討した。市場化され個人化されたリテラシー教育を再構築するためには,授業の深層において認識対象をめぐる読みが贈与交換として遂行されていることに目を向ける必要がある。それが顕在する仕組みを授業コミュニケーション内に具体化していくことで,共同的,対話的,批判的なリテラシー教育へと転回することが可能となることを指摘した。それは,学習者それぞれが学習対象について持つ解釈と理解,あるいは感情を含んだ言語的交換としてリテラシー教育をとらえることであり,個々の学習者のアクセントが加わりながら新たな意味づけを共同で創り出すコミュニケーションのプロセスとして授業を構想することである。最後に,共同的読みの事例を紹介し,共同的,対話的,批判的なリテラシー教育に向けた実践的アプローチを検討した。
- 2012-03-31