大規模災害における広域(都道府県)支援体制-東日本大震災の自治体による保健医療福祉支援の実態と今後の巨大地震に備えた効率的・効果的支援のあり方について-
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概要
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2011年7月に発表された「東日本大震災にかかる保健師,医師,管理栄養士等の派遣状況調査-被災地への支援を通じて把握した被災地の課題等の調査報告書」によって発災から6月までの間の被災地における支援の問題が初めて明らかにされた.また2012年3月に発表された「全国の自治体等による東日本大震災被災地への保健医療福祉支援実態調査報告書」により今回の東日本大震災において自治体等によって派遣された保健医療福祉チーム数,その派遣期間,活動内容,移動手段や宿泊先,そして支援チームの日常生活物資の入手方法の詳細なデータベースが被災市町村別に初めて提供された.派遣されたチーム数は5,992人日(人員×支援を行った日数)は140,765でこれは約700人が被災地で1年間働いた計算になる.この報告書は全自治体へ3度にわたり内容の再確認を行い,しかもいずれも100%の回答率を得るなど極めて精度の高いものである.以上の2つの報告書から以下の問題点が明らかになった.それは1)支援が必ずしも効率的かつ効果的に行えていなかった,2)長期支援に対する展望や計画が示せなかった,そして3)被災した市町村によって支援の地域格差がみられるというものである.この原因として,1)支援チームの派遣調整や被災地における情報収集について国による一元的な管理がなされていない,2)被災した市町村の行政機能低下により県との連携不足があげられる.この2012年の報告書のデータから中央防災会議によって示された南海トラフ巨大地震の想定被害に基づき,今回の東日本大震災と同程度の支援が行われると仮定して支援量を算定してみたところ,被災を受けないと想定される自治体の約37%の保健医療福祉職員を1年間被災地に派遣する必要があることが分かった.しかしながらこれだけの支援を行うことは,この支援する自治体の行政機能の低下を招くことになりかねず現実的に極めて難しいと思われる.この問題を解決するためには自治体等による効率的かつ効果的な支援のあり方を再検討することが国家的な危機を前にして急務であり,そのための考察を最後に行った.
- 2013-08-00