緊急対応期における保健医療分野の救援活動と後方支援体制のあり方について
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概要
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東日本大震災のもっとも重要な教訓は,災害関連法と地域防災計画のベースになっている災害の基本認識と災害対応の枠組みが,基礎自治体で対応可能な局地的災害を前提としており,今回の災害や予測される南海トラフ地震のような広域大規模災害を想定した救援の備えがなかったことである.各県で進められている災害対応計画の見直しも,従来の認識と枠組みの中での改訂にとどまるかぎり,同じ悲劇が繰り返されるものと懸念される.広域大規模災害に対しては,システムが破壊されること,緊急期の救護の成否は事前の備えに依存すること,災害は救急医療だけでなくパブリックヘルス全体の問題であるとの基本認識に立って,行政だけでなく地域社会が総力を挙げて取り組む体制づくり,情報の集約と共有,目標管理,後方支援ネットワークを備えることが必要である.また,事故から広域大規模災害までを「災害」の一語でくくって基礎自治体に災害対応の責任を負わせている現行の災害対策基本法を改め,必要な場合は国が調整指揮を統括できる専門組織の形成と制度構築を行うべきと考える.
- 2013-08-00