ガーナ北部における市場経済の浸透と農業技術の変化─ダグンバを事例として─
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
現在,ガーナでは市場経済の浸透度の相違により,南部と北部の地域間格差が拡大する傾向をみせつつある。しかし,ガーナ北部の農村でも市場経済化の影響により慣習社会の一部が変化してきており,農民が利用する農業技術に変化を生み出しつつある。本稿では,ガーナ北部の農村で実施した調査結果をもとに,農民が利用する農業投入財の変化から当該地域における市場経済の浸透と農業技術の変容について検討した。その結果,ガーナ北部の農民は,農業を主体とする自分達の生活を維持するために,不足する人力を人力以外の労働力で補い,内給や外給の投入財を利用することで,ある一定の生産量を維持していることが明らかとなった。そして,市場経済化が進むガーナ北部の農村では,それぞれの農民が外部環境の変化に柔軟に対応しながら生活を送っている。しかし,アフリカの農民の多くが,それまで維持され続けてきた農業生産の基礎的な部分をなす自家消費向けの食料作物生産を放棄して,一気に別の生産活動に重心を移すことは少ない。そのため,自家消費向けの作物生産を主体とした農業を営むガーナ北部農民の外部環境変化に対する対応が,最終的に販売向け作物生産を主体とする農業の展開にまで結びつくとは想像しづらい。とはいえ,ガーナ北部の農村部でも急速に進む市場経済化は,少なからず彼らの農業を変化させつつある。しかし,この変化は,あくまでも外部環境の変化に対する彼らの柔軟な対応であり,その進む先に安定的な農業開発の方向性が示されているわけではない。そのため,改めてガーナ北部の農業を詳細に把握し,長年営まれてきた農業をベースとした技術の改善を遂行していくといった農業開発が望まれる。
- 2013-09-20
著者
関連論文
- ナイジェリア経済における三層構造 : 産業連関分析による検証
- ガーナ北部における市場経済の浸透と農業技術の変化─ダグンバを事例として─
- マラウイの農業投入財補助金プログラムのもとでの小規模生産者の食糧安全保障 : 村落実態調査の結果から