クスサン幼虫の樹種選好特性 : 北海道と岩手県のクスサン個体群における事例
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
北海道では近年,これまで被害報告の限られていたウダイカンバ一斉林においてクスサンが大発生している。本研究では,クスサンの樹種選好性を飼育実験によって明らかにするとともに,ウダイカンバ林での被害が広がっている北海道赤平市と被害が広がっていない岩手県八幡平市の両地域において,クスサンの発生状況について調べた。飼育実験ではウダイカンバを餌としたクスサン幼虫は,シラカンバ,トチノキ,サワグルミを餌とした幼虫よりも個体体重が有意に重かった。選択実験では,シラカンバ,トチノキ,サワグルミを選択する幼虫よりもウダイカンバとクリを選択する個体が多かった。野外調査では,岩手県八幡平市においてもウダイカンバでクスサン幼虫が捕獲され,シラカンバ上で捕獲された個体よりも有意に体重が重かった。しかし,クスサンの卵塊はウダイカンバよりもシラカンバで多く発見された。一方,北海道赤平市のウダイカンバ林においてはクスサン幼虫が多数捕獲されたが,激害林分で捕獲された幼虫の体重は,被害の軽微な林分のそれよりも軽かった。これらの調査及び実験の結果から,今後岩手県においてクスサンによる大規模な被害が発生する可能性について考察した。
- 2010-09-30