美術家が選択する「日本」 : 現代美術における文化的アイデンティティの問題
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概要
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本稿は,国際的美術展においての「現代美術作品に見られる文化的アイデンティティの欠落」と言った状況を問題視することから論を始めた.問題として取り上げた理由は,「美術領域が自国のアイデンティティを持ちながら,世界的文化交流や多文化理解を成し遂げ得る重要な役割を担っている」このことを主張するためである.この主張を補強する方法として,作品に含まれる文化的アイデンティティを,海外で評価されて来た日本人美術家の実例を解読することで試みた.彼らの作品を通して明らかとなった,現代美術の文化的アイデンティティとは,日本美術の正統性や,日本文化の系譜をたどることで見出される「日本的なもの」であった.それは地域や民族の特色を強調させた日本の独自性とも言える.美術家はこれらを表現上の重要事項とすることで,世界的な枠組みでの「新たな文化」を育むことが可能となることもわかって来た.今後,日本が世界的な経済支援,技術指導,平和維持活動ヘの参加に加え,文化面でも世界にアピールして行くためには,現代美術に表現される「日本的なもの」が,その効力を発揮することになって行くことだろう.美術家が選択する「日本的なもの」とは,文化の国際相互理解に貢献する実効性を持つことが,改めて確認されることとなった.
- 文教大学の論文
- 2010-12-20
著者
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