スピーチコミュニティ : 生成される文化をとらえる媒介物(<特集>文化と媒介性を考える)
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概要
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文化の研究において、国民文化という静態的・画一的な文化観(e.g.,「和を重んじる日本文化」)が主導的な役割を果たしてきた。本稿の目的は、そうした画一的「文化」観とは異なる形で文化を媒介し、コミュニケーションを介して生成される文化を動的にとらえるスピーチコミュニティ研究について論じることである。以上の目的を達成するために、スピーチコミュニティ概念が使われた研究のなかから、Dell Hymes, William Labov,ならびにJohn Gumperzらによって牽引された三つの学問的潮流(「ことばの民族誌」、「変異分析」(相関的研究)、「談話分析」(やりとりの社会言語学))を取り上げ、それら三つの潮流において、スピーチコミュニティがいかに定義されているのかを確認し、その定義に基づいた諸研究の特徴について議論を進め、文化がどのようにとらえられているかを示した。三つの学流のうち、「ことばの民族誌」と「談話分析」においては、指標性という記号論的原理の導入もあり、コンテクストの概念化が行われ、言語研究を介した文化の研究の精緻化が進められてきた。特に、談話分析は、具体的な言語使用や規範を含む諸要素の連関である文化を、動的かつ精緻にとらえる枠組みを備えている。
- 2010-12-00