ドイツにおける構成主義歴史教育論の成立 : B.フェルケルの鍵問題討議型の場合
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概要
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本研究の目的はフェルケルの提案する構成主義歴史教育論の分析を通して,ドイツ独自の構成主義歴史教育論の成立要件とその原理を解明し,ドイツで構成主義歴史教育論が新しいパラダイムとして認められつつある理由を考察することである。本研究では,フェルケルの著書"Wie kann man Geschichte lehren ?"に提示された歴史授業と構成主義歴史教育論を分析するという研究手法を採用した。歴史授業の分析で,その歴史授業は多岐に亘る領域の理論を関連づけて形成した鍵問題討議型であること,従来の歴史授業を大きく変容する新しいパラダイムを提案するものであることが判明した。構成主義歴史教育論の分析で,フェルケルの提案する構成主義歴史教育論は,従来の歴史教育論を踏まえた上で独自の構想で発展させたものであることを究明した。以上の分析から以下の3点が明らかとなった。第1は,構成主義歴史教育論の成立要件は多岐の領域に亘る理論を理論的背景とすること,従来の歴史教育論を基盤とすることである。第2は,その原理は構成主義的な歴史授業を構想し,その歴史授業を根拠づける構成主義歴史教育論を構築するという理論レベルと実践レベルの調整ということである。第3は,これらの成立要件と原理は,理論レベルの有効性と実践レベルの実現可能性の保証を可能とし,この保証こそが構成主義歴史教育論が新しいパラダイムとして認められている理由であるということである。
- 2013-03-31