「手当て」としての身体診察 : 総合診療・家庭医療における医師-患者関係
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概要
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現在の医療現場では、画像診断や血液検査等、より容易に「客観的」な情報を得られるとされる検査技術の発達により、身体診察(視診・聴診・触診・打診などにより、患者の身体を診察すること)は省略される傾向にある。一方、医学的情報収集の上で有効であるのみならず、医師・患者間のコミュニケーションを促進するとして、身体診察を重視する医師もいる。身体診察が医師-患者関係に与える影響に関する先行研究では、ネガティブな側面に焦点を当てた考察や、特定場面の微視的分析が行われてきた。本研究はこれに対し、現在の日本の検査依存型医療という文脈の中で身体診察を医師と患者、およびその周囲の人々がどのように経験しているかを明らかにする。フィールドワークは岡山・名古屋・東京の総合診療・家庭医療の現場で行われた。身体診察は、特に定期的な診療過程において形式の定まったルーティン的行為であり、それを通じて患者が自らの状態を体感・把握することにより納得・安心を得る等の点で、治療儀礼と似ている。また、医師に患部を触れられることにより、患者は医師と問題を共有したと実感したり、快方に向かったと感じる場合がある。視覚的情報や数値を中心とした「根拠」に基づく医学では説明しきれない儀礼的効果や接触の意義が、医療現場で漠然とながら認められており、それに基づいて医療実践が行われていることを明らかにする。
- 2013-03-31
著者
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