会計情報の開示と投資家の反応 : マーケットマイクロストラクチャーによる分析
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概要
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本稿は,会計情報の開示が株式市場の投資家行動にどのような影響を与えるのかについて,マーケットマイクロストラクチャーのモデルを利用して分析した。情報トレーダーとノイズトレーダーに加えて,会計情報の開示により取引量を決定する戦略トレーダーの存在を導入し,各トレーダーが会計情報の開示によってどのような注文を出すのかを分析した。2期間におけるベイジアン・ナッシュ均衡を求めた結果,私的情報を有する情報トレーダーは株式価値が過大評価の場合は売り注文を出し,過小評価の場合は買い注文を出す行動が示された。一方で,過大評価の場合,会計情報による株式価値と株式の真の価値との相関が高いと,戦略トレーダーの株式需要には正の効果があることが示された。トレーダーの期待利得を調べると,過大評価,過小評価の程度が相当程度大きく,かつ,会計情報と株式価値との相関が高いときには,情報トレーダーの期待利得が増加した。会計情報の誤差が小さいとき,および会計情報と株式価値との相関が高いときには,戦略トレーダーの期待利得が増加した。従来の実証研究では,会計情報の開示と株式市場での取引高の増加との有意な関係が検証されている。本稿は,さらに異なるタイプのトレーダーごとに取引高の傾向を分類することで,会計情報の開示によって投資家がどのような注文を出すのかをモデルを使って示した。
- 2013-03-31
著者
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