開発支出の会計処理と価値関連性 : ドイツ企業の利益調整行動に焦点を当てて
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概要
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研究開発支出の会計処理には,発生時全額費用認識法と条件付資産認識法とがある。研究開発投資が将来便益獲得に貢献することを踏まえれば,開発支出の一部を資産として認識する条件付資産認識法の方が,現代の資産概念と整合的である。一方で,条件付資産認識法は経営者の見解の介入を必要とするため,利益調整の余地を与えることになる。本稿では,目標利益の一つである前期利益を達成するために,条件付資産認識法に基づく開発支出の会計処理を経営者が用いているか否か,および,もしそうであるのならば,そのような利益調整により利益情報の価値関連性が向上しているのか否かについて明らかにすることを目的として,検討を行った。検討の結果,経営者は前期利益を達成するために,開発支出の会計処理を行う傾向にあることが明らかになった。加えて,開発支出の資産認識により調整された利益情報には価値関連性がなく,費用認識により調整された利益情報のみに価値関連性があることが明らかになった。
- 2013-03-31