児童期における情動を表す比喩の印象的伝達機能の理解の発達
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概要
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本研究では,児童期の子どもがいつ,どのように情動を表す比喩の持つ印象的伝達機能を理解するかについて検討した。調査1では大学生に質問紙調査を行い,大学生が情動を表す比喩の印象的伝達機能を理解していることを確認した。調査2では,小学校2,4,6年生の児童265名を対象に質問紙調査を行い,比喩機能理解力の発達的変化および,比喩機能理解力と語感理解力との関連を検討した。物語の主人公が喜び・悲しみ・怒りのいずれかの情動を他者に伝える際に用いる言葉として,適切な比喩文・情動語を用いた字義通り文・不適切な比喩文の3種類の文を提示し,主人公の言葉に最もあてはまると思うものを1つ選択するという方法を用いた。参加児は,主人公が自分の気持ちを「より相手の心に残るようにわかりやすく伝えようとしている」という条件文のある伝達条件明示群と,条件文のない非明示群に分けられた。その結果,群間で適切な比喩文の選択率に差はなく,どちらの群でも2年生よりも4年生,6年生の方が比喩文を選択する人数が多かった。さらに,語感理解力の高い子どもほど伝達意図が明示されていなくても適切な比喩文を選択する傾向が見られた。これらの結果より,小学校4年生ごろから情動を他者に伝える際に比喩文を用いることが選択肢として加わり,比喩機能理解力が語感理解力のような,コミュニケーションにおける言葉の選択にかかわる能力と関連している可能性が示唆された。
- 2013-03-20