フランスにおける児童労働規制の展開(1874〜1914年) : ノール県の事例から
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概要
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フランスにおける児童労働規制の成立は,これまで国家による私的領域(職場・家庭)への介入の画期としてその重要性が評価されてきた。しかしその実際の展開については,多くの研究が規制の実際の効力という点で否定的な評価を下しており,そのため国家の私的領域への介入,特に家庭への介入という観点からの検討がこれまで十分になされてこなかった。本稿はこうした問題意識に基づいて,当時児童労働が盛んであった北仏ノール県の事例から,1874年から1914年における児童労働規制の展開について考察した。結論としては,以下のことを指摘した。この時期における国家の私的領域への介入のありかたは,児童労働や家族・学校の実態,地方有力者の態度,国政上の課題の変化などに対応しつつ大きな変容を被ったのであり,従来否定的評価がなされてきたフランスの児童労働規制の展開はそうした変容をもたらしたものとして肯定的に捉え直すことができる。さらにそれは1890年代以降の女性労働者や成人労働者全般を対象とする一連の労働政策を推進する1つの要因をなしていたとも考えられる。
- 2013-02-25