再石灰化されたエナメル質表層を再度脱灰したときの表層下脱灰層の性状変化に関する研究
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概要
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目的:エナメル質表層下脱灰層やそれを再石灰化したときの形態や化学分析に関する報告はあるが,再石灰化された表層下脱灰層を再び脱灰したときのエナメル質の性状変化に関する報告はほとんど見受けられない.本研究は,表層下脱灰層を再石灰化処理後,再度脱灰したときのエナメル質表層,表層下および深層部の性状変化について検討した.方法:ウシエナメル質よりブロックを切り出し,乳酸二層法を用いて表層下脱灰層を調製した.これを,カゼインホスホペプチド-非結晶性リン酸カルシウム複合体(CPP-ACP)含有ペーストあるいは酸性フッ素リン酸(APF)ゲルを用いて1週間再石灰化処理を施した後,酢酸人工脱灰液に6日間浸漬し再び脱灰した.まず,各処理の施されたエナメル質表層下脱灰層の表面変化を走査電子顕微鏡にて観察した.次に,表層下脱灰層調製後,再石灰化処理後,および再脱灰処理後の各試料より切片を調製し,Contact Microradiogram (CMR)撮影を行い,ミネラルプロファイルを作成し,表層下脱灰層部とそれより下方の深層部における再石灰化の様相やミネラル喪失量を評価した.さらに,フィールドエミッション電子プローブマイクロアナライザを用いて,各切片の縦断面の微細構造とCaやPの元素分布の変化を観察した.結果:再石灰化されたエナメル質表層下脱灰層を再度脱灰したときのエナメル質表面では,小柱鞘部の脱灰は認められたが,実質欠損は認められなかった.また,本研究により,CPP-ACPおよびAPFは表層下脱灰層部の再石灰化を引き起こし,エナメル質表層および表層下脱灰層部では耐酸性が獲得されることが明らかとなった.しかしながら,それより下方の深層部では,ミネラル密度が健全エナメル質と同等のため,再石灰化はほとんど起こらず,再脱灰時には表層および表層下脱灰層部に比べ,より強い酸の侵襲を被ることが判明し,また,エナメル小柱部分が小柱鞘に比し,優先的かつ顕著に脱灰されることが確認された.結論:本研究の条件下では,再石灰化された表層下脱灰層を再度脱灰した場合,エナメル質表層ならびに表層下脱灰層部は耐酸性を獲得することが判明した.一方,再度脱灰すると深層部は,酸による強い侵襲を被り,エナメル小柱部分が小柱鞘に比し,優先的かつ顕著に脱灰されることが判明した.
- 2012-12-31