Asokavadanamalaにおけるウパグプタのマーラ調伏物語について
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概要
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Asokavadanamala (AAv-m)は11世紀から17世紀頃にかけてネパールで編纂されたavadanamala文献に属する韻文による未公刊の仏教説話である.本論文ではその第二章Upagupta所収の一説話「ウパグプタのマーラ調伏物語」を取り上げ,National Archives (B#94/7),東京大学(MATSUNAMI Cat #37)所蔵の二写本に基づいて物語の構成とその背後にある思想を明らかにすることを試みた.AAv-m所収「ウパグプタのマーラ調伏物語」は244詩節から構成され,Divyavadana第26章,Ksemendra(11世紀)のAvadanakalpalata第72章所収の並行話からそれぞれ47詩節,27詩節を引用している.残る170詩節のうち約100詩節はDivy所収の並行話の散文部を韻文化したものであるが,残余はAAv-mの作者の創作に帰せられる.これら70詩節を言語,文体,思想的側面から検討した結果,次の特徴が見られることが明らかになった.言語,文体的特徴としては,(1)AAv-mと同じavadanamala文献に属するBhadrakalpavadanaのテキストにTATELMAN [1999], STRAUBE [2007]が認めた古典梵語文法からの逸脱例が等しく確認される.(2)文体は古典梵語美文学の作詩法を前提としたものではなく,民衆向けの俗語的表現を用いたものである.思想的特徴としては,(1)ウパグプタによるマーラの懲罰場面に他の並行話に見出されないヴィシュヌ神とシヴァ神を登場させ,彼等に長老の権威を認めさせることによって,AAv-mの作者が仏教のヒンドゥー教に対する優位性を説いている.(2)AAv-mの作者は物語の末尾でウパグプタ長老に阿弥陀浄土について言及させており,浄土思想の影響を受けていた可能性がある.
- 2013-03-25
著者
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