日本におけるミシン輸入動向と衣服産業の趨勢--20世紀転換期の大蔵省主税局編 『外国貿易概覧』を中心に-- (経済学部特集号)
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概要
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19世紀後半から20世紀初頭にいたるミシンの普及と多様化によって、世界における衣服産業の勃興は同時代的に進行した。19世紀末の段階で大蔵省はミシンは単なる便利な道具だと認識していた。1900年に米国シンガー社が日本上陸を果たした時、その市場開拓には、米国内で大量に余っていた手廻ミシンの在庫処分という意図があった。1902年の段階で、シンガー社製、米国他社製、ドイツ製などを含め、輸入されたミシン種別は実に数百種類に及んでいた。大蔵省は改めてミシンを再認識する必要を感じた。とりわけ、1910年代にメリヤス業や縫製業が分化していく事態を目の当たりに、その主因がミシンの多様化にあると認識するに至った。1910年代は、輸入ミシンの多様化と衣服産業の多様化が共進化を遂げた時期であった。本稿で取り上げる『外国貿易概覧』のミシン輸入報告も、この頃から豊富な内容をもちはじめる。20世紀最初の四半世紀には、縁縫い、留め縫い、刺繍などの用途別ミシンや、ジャケット用・コート用、メリヤス用、帽子用、靴用、鞄用等々、品目別ミシンがほぼ出揃った。
- 2008-07-15
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