放射線治療の進捗と第二期への展望
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概要
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放射線治療は手術,化学療法とともにがん治療の3本柱の一つであり,社会の高齢化とQuality of Life(生活の質)の視点などにより放射線治療を受ける患者数は増加の一途を辿っている.2007年に策定された「がん対策推進基本計画」において,放射線治療については「全てのがん診療連携拠点病院(以下,拠点病院)において放射線療法を実施すること」および「都道府県拠点病院及び特定機能病院において放射線療法部門を設置すること」が目標としてあげられ達成されたものの,常勤医師不在の拠点病院がなお10%あり,その他の専門スタッフとともに充足には程遠い現状である.2012年には新たな「がん対策推進基本計画」が策定されたが,質の高い安全な放射線治療の推進ならびに均てん化に向けなお多くの課題がある.厚生労働科学研究費補助金がん臨床研究事業の「がん医療の均てん化に資する放射線治療の推進及び品質管理に係る研究」により,「がん診療連携拠点病院指定要件(放射線治療部門)の改訂に向けての提言」が作成されており,効果的・効率的な機能強化に向け均てん化と共に一部機能の集約化も必要である.一定の猶予期間とともに常勤医が確保できない地域拠点病院では都道府県拠点病院等からの診療支援体制を構築するなど,各地域の状況に即した連携体制の確立が必要である.文部科学省補助金事業による「がんプロフェッショナル養成プラン」では,国公私立大学間のネットワークによる人材育成が図られているが,今後は行政レベルにおいても都道府県単位を越えた連携が図れるようになることが必要である.先端的な高精度放射線治療である強度変調放射線治療(IMRT)は,都道府県拠点病院において3年以内に90%の施設で対応可能となる見込みであるが,スタッフの増員,装置の更新,研修会の実施などさらなる取り組みが必要である.小線源治療については,地域間,施設間格差が著明である子宮頸がん腔内照射技術の標準化・均てん化が急務であり,今後は画像誘導小線源治療(IGBT)の普及に向けた対策,適切な診療報酬についての検討も必要である.放射線治療の安全,質の確保のためには,治療用照射装置の出力線量測定といった第三者評価の必須化や放射線治療を対象とした効率的・効果的なインシデント報告システムの立ち上げが必要である.今後これらの課題の解決とともに,安全で質の高い放射線治療の普及と治療成績の向上を期待したい.
- 2012-12-00