日本の臍帯血バンクの課題
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概要
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本邦の臍帯血移植は年間1100例を超え、移植源として重要な地位を占めている。2012年9月には「移植に用いる造血幹細胞の適切な提供の推進に関する法律」が制定公布され、本邦の臍帯血バンクを巡る状況は大きな転換期を迎えている。,バンクサイズとしては本邦のHLA型分布と臍帯血移植患者の年齢から、成人男性に使用可能な細胞数の臍帯血を最低2,000、できれば10,000を公開できる、というのが第一目標であろう。小児ではよりHLA型を適合させる方が予後が良いとの報告があり、多少細胞数が低くても保存公開し、HLA 5/6適合以上の選択が可能な様、10,000以上のバンクサイズを考える必要がある。2003年以降は11バンク体制であったが、近年3カ所の小規模バンクが事業を中止した。臍帯血バンク事業には多様な職種が必要であり、安定し永続的な組織が望ましい。手順の統一と品質管理面からは臍帯血バンクの集約は利点があり、採取推進活動をより組織的に行う事により、臍帯血採取協力施設の広域化も可能と考える。臍帯血採取は採取協力施設のボランティア活動として推進されてきたが、新たな支援と体制構築が必要と考える。成人男性にも十分な臍帯血を保存するためには、より多くの採取協力が必要であり、しかし臍帯血保存率は低下する。採取現場のモチベーション維持はより困難になると推測され、採血推進活動を大きく転換する必要がある。臍帯血の効能効果に関する品質の指標として有核細胞数、CD34陽性細胞数やコロニー形成細胞数を用いている。本邦の公的臍帯血バンクは、永らく方法の統一と多施設検定に協力してきており、これらの検査についてはかなり安定していると考える。新たな法律のもと本邦の管理体制が確立されるよう努力したい。
- 2013-03-31