章学誠『文史通義』の言語観 : 言語表現の多義性と解釈の多様性
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
章学誠は清朝の偉大な思想家である。彼の特異な言語観に拠れば、古代においてコトバは「言」(言語表現)と「意」(意味内容)の完全なる一致という理想状況にあったが、時代が降るにしたがって、「言」と「意」の間に不幸な乖離が起こった。この乖離に起因する思想的混乱を解消しようとしてさまざまな思想的言説が現れる一方、乖離を逆手にとってレトリックやアイロニーを多用する文学言語が出現するに至った。「言」と「意」の乖離という言語状況に直面しているわれわれにとって重要なことは、言語表現の多義性、曖昧性に鋭敏になると同時に、コトバの理解とは感情移入や共感を伴った主観的な営みであることを理解すべきである。こうした言語観に基づき、章学誠は同時代の硬直した文献実証主義者の解釈学、人間観、歴史観を痛烈に批判した。本論文は彼の言語観の理論的意義を明らかにするとともに、それが生まれてきた思想的基盤にも光りを当ててみたい。
- 2013-03-00
著者
関連論文
- 立身出世の階梯を諦めた人々--章学誠の "紹興師爺" 像を中心に
- 支謙訳維摩経から羅什訳維摩経へ--訳経史研究の支那学的アプロ-チ (日本大学における第二十八回〔日本印度学仏教学会〕学術大会紀要-1-)
- 章学誠のテクスト論--乾嘉樸学の読書論とその批判
- C.G.ユングと易経--共時性(Syncronizitat)をめぐる比較思想的考察
- シノロジーの解剖 (五) : 著者・事柄・言説
- シノロジーの解剖 (四) : テクストと言語
- シノロジーの解剖(三) : テクストと解釈(2) (大内田三郎教授退任記念号)
- シノロジーの解剖(二) : テクストと解釈
- シノロジーの解剖(一) : その批判と提言
- ドバリー著『朱子学と自由の伝統』の翻訳を通じて
- 読「新理学」札記-1-形而上学は可能か
- 明代復古派詩説の思想的意義
- 黄宗羲「三峯禅師塔銘」攷-2-漢月法蔵と知解宗徒
- 黄宗義「三峰禅師塔銘」攷--黄梨洲と済宗法諍
- 曹操の人物評と中国思潮 (特集 三国志の覇者 曹操伝)
- 荀〔イク〕--曹操が最も頼りとした魏の謀臣 (特集ワイド 歴代皇帝をつくった名軍師)
- シノロジストとディレッタントのはざまで--本田濟先生の人柄と学問を回想する
- 中國における近代的學問知の成立
- 中国前近代知識人の都市をめぐる言説--日中比較の視点から
- 田上先生の思い出
- 章学誠『文史通義』の言語観 : 言語表現の多義性と解釈の多様性
- やわらかい知とかたい知
- 立身出世の階梯を諦めた人々 : 章学誠の"紹興師爺"像を中心に
- 黄宗義「三峰禅師塔銘」攷--黄梨洲と済宗法諍
- 山口久和略歴・著作目録その他
- シノロジーの解剖 (五) : 著者・事柄・言説
- シノロジーの解剖 (四) : テクストと言語
- シノロジーの解剖(三) : テクストと解釈(2) (大内田三郎教授退任記念号)
- シノロジーの解剖(二) : テクストと解釈
- 読『新理学』札記 [一] : 形而上学は可能か
- 明代復古派詩説の思想的意義(西野貞治教授 宮田一郎教授退任記念号)
- 黄宗羲「三峯禪師塔銘」攷(二) : 漢月法藏と知解宗徒
- 存在から倫理へ--王夫之「尚書引義」の哲学