会話参加者によるFTAバランス探求行動
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概要
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Brown&Levinson(1987)(以下B&L)のポライトネス理論が注目したのは,FTA(Face Threatening Act)発話前後のミクロな部分であった.本稿では,会話参加者の一方が質量ともに過度にFTAを遂行した会話例を取り上げ,談話全体を視野に入れたマクロな観点からFTAのやりとりの推移を談話の展開とともに分析し,FTAバランス探求行動というダイナミックな相互行為の存在を指摘した.すなわち,(1)過度のFTAを犯したと認識すると相手からのFTAを誘導し,フェイスを侵害された側も相手からの誘導に応じてFTAを遂行する,(2)過度のFTAを犯した側が,その後自らに対してFTAを遂行する,(3)一方,相手から多めにFTAを受けたと認識すると自発的に相手に対してFTAを遂行する,ことを示した.B&Lのポライトネス理論は,個々のFTA遂行直前におけるフェイス侵害度の見積もり行為に焦点を当て,その結果採用されるミクロなレベルでの主として相手のフェイスに対する「FTA軽減型」ストラテジーを論じている.一方,本稿のFTAバランス探求行動は,談話全体のマクロなレベルにおいてFTA遂行後のすでに侵害されたフェイスの参加者間のアンバランスに焦点を当て,そのアンバランスを是正するための「FTA追加型」のストラテジーによる参加者双方に対するフェイスワークを論じる.このように,FTAバランス探求行動は基本的にいくつかの点で従来のポライトネス理論とは異なる観点によるものである.
- 社会言語科学会の論文
- 2008-08-31
著者
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