現代東京の話しことばにおける言語形式「たしかに」 : 大学生による日常会話をデータとして
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概要
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本稿の目的は二つある.一つは,大学生による日常会話をデータとして,「現代東京の話しことば」の共時態における言語形式「たしかに」の用法を,会話分析の手法により,記述・分析すること.もう一つは,分析により明らかになった諸用法に歴史性を読み取り,言語形式「たしかに」の用法変化に関して考察を行うことである.ターンの構成に注目した共時態の分析では,約9割の「たしかに」がターン冒頭部に出現していること(全239例中214例),独立性の高い用法に使用が偏っていること(全239例中191例)などが明らかとなった.また,発話の連鎖組織に注目した共時態の分析では,言語形式「たしかに」を含む発話の連鎖を, (I)「記憶に関する確認要求→確かさの確認」, (II)「疑問の表明→疑問の共有」, (III)「判断の表明→判断の受容」という三つに分類することができ,全239例中201例の「たしかに」が(III)の連鎖の中に位置づけられることが判明した.その後,妥当性が高いと考えられる「非独立用法>独立用法」という用法変化の傾向を軸にし,発話の連鎖の分類に関しても用法変化の仮説を設定し,これらの仮説の説明の可能性を探った.その結果,設定した用法変化の仮説は,「語用論的強化」や「コミュニケーションの効率化」などによって説明することが可能であり,妥当である可能性が示唆された.
- 2010-08-31