尊敬語・謙譲語の機能に関する考察 : 結婚披露宴の司会者の発話を例に
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概要
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結婚披露宴の司会者の発話では,新郎新婦を主語とする動詞に尊敬語も謙譲語も使用される.本稿では,このような「話し手」・「聞き手」・「主語」が固定された状況における尊敬語と謙譲語の使い分けが起こる要因と機能について考察を行う.司会者の発話のうち,聴衆全体に向けられた発話では,司会者自身の視点から事態を描写するのか,あるいは話題の登場人物である新郎新婦の視点から発話するのかによって,尊敬語と謙譲語が使い分けられていた.新郎新婦の行為を列席者に対する感謝の気持ちや配慮の心情を伝えるものと捉えるときには,列席者を立てる謙譲語を用いて二人の心情を代弁し,新郎新婦のことを祝福されるべき主役と捉えるときには,二人を立てる尊敬語を使用する.語り手の視点が比較的自由に移動できる聴衆全体に向けた「語り」では,司会者は尊敬語と謙譲語を使い分けることによって,描写する事柄に異なる意味づけを行い,披露宴の雰囲気を様々に演出しているのである.
- 2009-08-31