謝罪表明義務感 : 日本と台湾の対照研究
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概要
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本研究は質問紙調査をもとに,日本と台湾の「謝るべきと感じること」という「謝罪表明義務感」および「すまないと感じること」という「罪悪感」の異同について比較した.回答を因子分析した結果,「過失」,「被援助」,「相互儀礼」,「責務不履行」,「社会的ルール違反」といった5因子を抽出した.さらに,参加した社会人の日本人(67)と台湾人(69)の回答を比較したところ,次のことが判明した.(1)「謝罪表明義務感」については,「過失」と「相互儀礼」因子は共に日本人が台湾人よりも謝罪すべきだと強く感じる因子であった.一方,「被援助」や,「責務不履行」,「社会的ルール違反」因子においては,両群で有意差が見られなかった.(2)「罪悪感」については,「過失」と「社会的ルール違反」因子において両群で有意差が見られた.「過失」では,日本人が台湾人よりもすまないと感じやすくて,「社会的ルール違反」では,台湾人が日本人よりもすまないと感じやすかった.(3)「謝罪表明義務感」と「罪悪感」は,日台では,ともに予測的な関係にある.「過失」因子では,「謝罪表明義務感」は「罪悪感」によって説明できる割合は高くないが,「被援助」,「相互儀礼」,「責務不履行」,「社会的ルール違反」では,説明できる割合が高く,「罪悪感」が「謝罪表明義務感」の決定の主要因であるという結果であった.
- 社会言語科学会の論文
- 2006-03-30