薬害HIVにおける医療者と患者のコミュニケーション(<特集II>医療現場におけるコミュニケーションの問題)
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概要
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いわゆる「HIV薬害事件」においては、医師から処方された血液製剤によって当時致命的と考えられたHIV感染が引き起こされた。このことは、患者の医師に対する信頼を大きく損なうことになった。しかし、ある患者は、医師全体に関しては批判的態度を示しているにもかかわらず、自らを感染させた医師については信頼を維持し続けている。ここで示される語りによれば、この患者P氏は、感染を告知しなかった医師を厳しく批判する。この批判的意識は、地域の医師全体やさらに血友病専門医にまで向けられ、やがて事件の全体を「薬害」とみなす認識に到達することになる。他方、患者へ説明に意用い、患者の生活全体の向上を図った医師については、この医師の死去のあとまで信頼を持ち続け、自らを感染きせた行為について免責しているのである。この患者の語りを参照しながら、医師と,患者との間のコミュニケーションのあり方について考える素材を提供したい。ここに示すデータは、私たちが4年間にわたって行ってきたHIV感染被害問題の関係者に対する聞き取り調査から得られたものである。
- 関西社会学会の論文
- 2007-05-26
著者
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