少子高齢社会における生活保障と世代間関係(<特集I>世代論から見た日本社会)
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概要
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今日の日本では、世代間関係、とくに社会保障制度における世代間不公平性が重要な問題となっている。世代間不公平性とは、資源配分をめぐる世代間の対立である。その背景には、少子高齢化の進行、経済成長の鈍化、家族や労働市場の変化などがある。本稿では出生コーホートに注目して、世代間関係について検証した。第一に、公的な世代間の所得移転である公的年金制度への不公平感の推移と規定要因を分析した。その結果、1990年代後半から2000年代前半にかけて全体的に不公平惑が高まっていること、さらに、1960〜64年生をピークに、若い世代ほど不公平感を感じている傾向を確認した。この結果は、公的年金制度をささえる社会的連帯が弱いことを示唆する。一方、政府と家族との間に代替関係があると指摘されている。そこで、第二に、私的な所得移転である親から子への援助について分析した。若い世代は住宅取得にあたって親からの援助をあまり受けておらず、これが不公平感をもたらしているようだ。若いコーホートの不公平感は今後も高いであろう。それと同時に、子供の教育費負担が高いライフステージにいることが不公平感をさらに高めている可能性もある。そうであるならば、適切な政策によって家計負担が解消されれば、不公平感は低くなるだろう。今後は、ライフコースの視点を重視した世代間の資源の配分を検討すること、マクロレベルとミクロレベルの世代間関係の相互作用を検討することが求められよう。
- 関西社会学会の論文
- 2007-05-26