贈与制度の身体論的把握 : クラとポトラッチ
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概要
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贈与現象の解明には制度論的と行為論的とでもよぶべき二つの接近法を想定することができるが、本稿では、より包括的な贈与研究の前段階として、制度論の立場から贈与制度を「身体論的」に記述する試みを展開する。ここで「身体論的」というのは、人間の行為を目標選択の過程としてではなく、単純に「身体の動き」としてながめる視点のことをさす。「身体の動き」として贈与制度内諸行為をながめることにより、それらが、固有の状況定義(共同体的仮構)を産出するドラマとして浮かび上がってくる。クラとポトラッチという二つの贈与制度が取り上げられ、それぞれに固有の共同体的仮構が明らかにされる。クラの環をつくる人々の動きが作り出すのは、「クラの環全体の友好関係」である。この仮構は彼らの主観とは関係がない。ポトラッチにおいては、「財産への非依存」という共同の理想(という仮構)が産出される。加えてここでは、仮構の産出が、威信差の出現と財産の破壊というかたちで生活空間に甚大な影響を与えてしまう。最後に「財産の破壊」を素材にして、共同体的仮構からはみ出してしまう贈与行為の可能性が論じられる。バタイユの供犠についての議論が参照され、内奥性概念を中心とする彼の議論の特徴が明らかにされる。その一方で、バタイユとは異なる方向で制度を超える贈与行為の可能性も示唆される。
- 関西社会学会の論文
- 2005-05-28
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