地域づくりに働く盆踊りのリアリティ : 岐阜県郡上市八幡町の郡上おどりの事例から
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概要
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現在、全国各地にて、郷土芸能・民俗芸能といった伝統文化を見直す機運が高まってきている。その関心の源を地域社会の側から要約すれば、ローカルな伝統文化は、その地域にとって重要な観光資源として地域づくりの契機になると同時に、地元住民に集合的なアイデンティティを供給する。本稿の事例である岐阜県郡上市八幡町の「正調郡上おどり」も、そのような伝統文化の典型である。ところが、フィールドワークを重ねると、「正調」に対する住民の反応は冷ややかであり、地元の踊り離れが進行している。さらに、住民のなかには、「正調」とは別の郡上おどりを創造し、実演する人々まで現われた。本稿は、このような「正調」に対する住民の踊り離れ、なかでも「正調」とは異なった盆踊りイベントの開催には、いったいどのような意味があるのかを明らかにするものである。本稿では、まず、踊り離れを引き起こした歴史的文脈を記述した後、次のような現象に注目する。住民は、現在の観光化した「正調」と対比しつつ、それ以前の踊りの"風情"について語り合い、独自の審美的リアリティを組み上げる。さらに、このリアリティを引き受ける住民こそ、観光に代わる、"望ましい・本来あるべき"踊りを具体化する。最後に、筆者は、一連の住民の動きが観光化に対する反省を意味すると結論づけ、伝統文化を通じた地域づくり論の模索に際し、"風情"といった「生活感覚」が重要であることを指摘する。
- 2004-05-22
著者
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