介護ライフスタイルとジェンダー : 老親介護をめぐる夫婦の交渉過程の分析から
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概要
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近年、家族介護を提える新たな視点として、家族ライフスタイル論から介護行為そのものを家族ライフスタイルの一つとして捉える視点が出現している。この論考においては、家族の個人化の進行により、個々人は家族介護についても個人的選好をもつようになり、その結果、要介護者の意思を尊重し配慮しながら、家族・親族メンバー間での交渉をとおして「介護ライフスタイル」が形成されるようになると説明される。本稿では、この「介護ライフスタイル」をジェンダーの視点から検討することを目的として、「息子夫婦による親の介護」と「娘夫婦による親の介護」を比較した事例分析を行なった。夫婦の交渉過程の分析から、「介護のライフスタイル化」は、男性を実質的な介護担当者の役につけて、固定的な性別役割分裂をゆるがす契機を提供する一方で、女性を自発的に介護に向かわせて、「女性による介護」の再生産メカニズムを存続させる危険性を孕んでいるという、ジェンダーの視点からの「介護ライフスタイル」におけるパラドックスが示された。そして最後に、現代の家族介護において「関係性コミットメント」が重視される傾向が指摘され、家族ライフスタイル時代の家族介護においては、家族成員間に「緊密な一体化した関係性」ではなく「適度に距離をおいた関係性」が築かれる必要性が論じられる。
- 2003-05-24