エスノメソドロジーとフィールド調査(<特集II>社会調査の多様性と可能性)
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概要
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エスノメソドロジーの文献の中でフィールドワークそれ自体に言及したものは少ない。しかしながら、エスノメソドロジーによって方向づけられた仕事も多くある。エマーソンたちによればそれは、インタビューや当事者の会話を(1)特定の文脈(コンテクスト)にもどしてやり、文脈に即してメンバー自身のカテゴリー化実践を特定化する。さらにはポルナーの「ラディカル・リフレクシヴィティ」の教えにしたがって、(2)調査者自身の調査行為を含めた調査プロセスの自己言及的な批判的分析をすることにある。この調査方針は、シルバーマンたちの提唱する啓蒙主義以降の批判実践としての調査である。それは、相互行為のシークエンスに沿った言説編成を、フーコーの言う「真理」を産出する権力装置として批判的に解釈する実践である。ここでは長野県の精神障害者の共同住居の調査の一場面を取り上げ、私たち調査者の行為自体を俎上に上げる。ここで明らかにされたのは、地域福祉のモデル・ストーリーを強化するかたちで、調査者が対象者の言説に挑戦するプロセスである。もし調査者が対象者の言説を地域福祉のモデル・ストーリーによって抑圧したり、選別したりしていくならば、ここでの活動の現実と多様性を切り捨てていく結果になるだろう。したがって、調査者はこうした批判実践を通して自らの調査を巻き込んだ言説編成をそのつど問題化しなければならない。
- 関西社会学会の論文
- 2002-05-25
著者
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