「高齢者施設入居者の性」に対する職員の認識と対応についての考察 : 山形県内施設の調査から
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概要
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本稿では,高齢者の性が人権であるとの基本的視点に立ち,高齢者福祉・介護施設における入居者の性に対する現状を分析して,対応のあり方を検討した.まず,先行研究から高齢者の性をとらえ,次に筆者による施設調査の一部を活用して入居者の性に関する現状を整理し,その対応のあり方を考えた.その結果,施設のなかには,職員に対する性的働きかけと入居者同士の性的場面が多様なかたちで存在していた.それに対し,管理者は入居者の性への対応の必要性を理解しつつも具体的対応の段階では否定的になり,職員は基本的に肯定しつつも明確な対応ができず,かつ,個人的対応段階にとどめたいと考えていた.その背景には,性の個人性と秘匿性,施設の公共性と公開性,管理者と職員の道徳意識という条件が複雑に絡んだことによる対応の困難さがあった.今後の対応のあり方としては,施設の体制と職員による対応方法を構築し,その連携を図ることが必要であると考えられた.
- 2008-04-01