少年法「改正」における危機の創出(<特集>「犯罪」の創出)
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概要
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2000年の少年法改正は、議員立法によるもので、子どもの資質や責任を積極的に追及し、子ども問題を糸口に、社会的危機の克服の必要性が制度論として広く展開された。少年犯罪の「凶悪化、低年齢化」が強調され、「不安の政治化」の一局面とも言える。改正過程では、(1)改正の必要性、(2)厳罰化の社会的影響、(3)子どもの実状についての検討が不十分だった。本来、立法審議にあっては、第一次的な立法事実の挙証責任は提案者にあることを明確にしておくべきだ。またその数値データは、市民の立法過程へのアクセスを保証するためにも、広く公表されるべきだろう。今後は、「立法過程」の研究が必要と思われる。改正審議では、(1)子どもの「犯罪」という用語が強調され、「個人の責任」追及の議論が展開された。それは、非行と社会的要因の関係、子どもという存在への社会的関心を希簿化させた。さらに、(2)「専門性・専門家への疑義」が強調され、家庭裁判所の社会的意義は結果的に低下した。また、(3)犯罪を生み出さない安全な「環境」形成の必要性が強調され、行政警察活動の強化につなかった。一連の重罰化、刑罰化の議論は、非行問題に関わる社会的資源とモチベーションの衰退化と密接である。5年後の見直しの議論のために、運用のチェックと立法時の議論との引き当てが必要だろう。
- 2004-05-22