介護保険制度におけるホームヘルパーの裁量権に関する研究
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概要
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本稿の目的は,ホームヘルパーの離職率の高さと人材確保の困難な状況は,待遇や社会的評価に加えて,要因のひとつに労働におけるホームヘルパーの裁量権の喪失があることを検討することである.労働における裁量は,職種を問わず,労働におけるやりがいと密接に関連している.介護保険制度以前と以後では,援助過程におけるホームヘルパーの裁量権の及ぶ範囲は縮小されている.ホームヘルプ労働は,最も柔軟かつ臨機応変な対応が求められる対人援助であるにもかかわらず,テイラー主義の影響が色濃くみられ,業務の限定化,細分化,マニュアル化,職場集団の解体が進められている.今後の展望として認知症高齢者や精神障害者の在宅ケアにおけるホームヘルプニーズは増大することが考えられる.しかし,現状のホームヘルプサービスではそのニーズに対応することは困難であると考えられる.検討の結果,ホームヘルパーの仕事における裁量権の担保が,利用者との相互行為としての援助実践,自律を支援する援助を可能にすることが示唆された.
- 2008-10-01