介護保険制度下の住民参加型組織の対応 : デイサービス事業の施設会計から
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概要
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介護保険事業が開始されて3か月,制度創設の目的の一つとして掲げられていた多元的サービスの選択による利用者サービスの向上は実現されるのであろうか.各種の事業体で経営問題が顕在化しているが,とくに単独施設型通所介護事業における経営が厳しいことは民間事業者の参入が極端に少ないことからも推測される.そのなかで,デイサービスセンター経営に実績のある非営利住民参加型組織のサービスに対する期待は大きい.本稿ではこの住民参加型組織の介護保険への現時点の対応を,施設会計予算を中心に,デイサービスセンター3事例をとりあげて検討した.その結果,どの事例でも利用者の増加と人件費の実質的縮小により採算をとろうとしていた.ここではサービスが後退しているだけでなくサービス供給側の住民からみても雇用条件が悪化していることが明らかであった.その最大の要因は介護保険の通所介護に対する介護費用単価が低すぎることにある.住民参加型組織が介護保険の指定居宅サービス事業者としてデイサービス事業を行う場合,その使命の達成が困難になっていることが危惧される.デイサービス以外の介護保険事業(訪問介護など)や住民のニーズに応じた独自事業により収入を確保していくことが,今後の課題である.
- 日本介護福祉学会の論文
- 2000-10-01