介護保険制度における施設経営 : 住民参加の試算
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概要
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本稿では介護保険導入後の在宅サービスセンターの運営およびサービスの提供が住民参加のボランティア団体によって可能かどうかという点について,事例(町田市に介護保険導入と開設時期を同じくして開設予定の第7エリア高齢者在宅サービスセンター<B型・E型>の経営をめざし現在活動中の住民組織)における経営面からその採算性を検討した.これまでの筆者の試算からみると,介護保険費用では,同センターの経営は大幅な赤字を示している.そこで本稿では,住民参加による経営の可能性を,経営努力という観点から試算・検討した.その結果,住民参加による施設経営は,(1)ボランティア意識の強い住民が安価な賃金でサービスを提供する方法,あるいは(2)利用者に負担を強いる方法によってかろうじて採算がとれることが試算された.しかしそのいずれにも大きな問題があり,住民参加による在宅サービスセンターの経営の厳しさが予想された.しかしながら一方で,住民参加でサービスセンターの運営を行うことのメリットも大きいことが期待される.住民参加のメリットを最大限に生かす方法として,(1)地域住民のニーズにきめ細かに対応できるような独自事業,あるいは(2)効率性や営利を目的としない住民参加ならではの独自サービスによって,採算がとれるような経営をしていくことが,住民参加型施設経営には必要だと考えられた.介護保険制度のもとでは,最も身近に住民のニーズをとらえることが可能な地域住民によって運営される施設経営は,とくに重要な意味をもつものと考えられた.
- 日本介護福祉学会の論文
- 1998-10-20