産業高度化、グローバル化、地域再編 : 「アジアのシリコンバレー」台湾・新竹の経験(<特集I>アジアの中の日本 : ハイブリッドモダンの社会と文化)
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概要
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1980年に台湾政府が産業高度化政策の一環として開設した新竹科学工業園区は、政府の庇護の下で、隣接の公的研究機関や大学と密接に連携しながら高度な産業クラスターを形成するとともに、やはり政府の仲介により、海外のハイテク産業拠点(特にシリコンバレー)との密接な経済社会的ネットワークを形成した。そうして、当地は短期間のうちに「アジアのシリコンバレー」と称される世界有数のハイテク産業拠点に変貌した。当然ながら、そうした園区の急激な発展にともない、新竹地域は産業構造だけにとどまらない広範な再編過程を経ることとなった。その初期段階(1990年代末ごろまで)は概して政府当局と有力企業を主体とした"上から"の地域再編であって、地域社会を主体としたものではなかったが、近年では"下から"の地域再編の可能性を模索する取り組みが地元の市民団体などを中心にみられるようになってきている。そうした取り組みに関する事例研究から明らかになったのは、「市民社会」の構築という課題が一つの社会的要請となっているということである。過去四半世紀間に新竹がたどってきた産菜高度化、グローバル化、地城再編の軌跡は、同時代アジア(特に中国沿岸部)の動向を見渡してみると、それほど特殊ではない,。日本から21世紀アジアの経済社会的動態を理解しようとする際、過去四半世紀の新竹の経験は有効な"橋渡し"となるだろう。
- 2008-05-24